糖尿病の本当の原因と
今から始める『ファイトケミカル』
監修:元ハーバード大学准教授 麻布医院 院長 髙橋 弘
世界で8秒に1人が亡くなっている*糖尿病。あなたは糖尿病の原因を知っていますか?
*出典元:IDF Diabetes Atlas 8th Edition
血糖値の流れ
- 毎日の食事には
糖がたっぷり含まれています
- 糖は小腸から吸収されて
血管の中に入ります
- インスリンは糖を
エネルギーに変換します。
大事なのは、インスリン
インスリンは、糖をエネルギーに変えて血糖値を下げる唯一のホルモンです。インスリンがなければ、血糖値を下げることができません。
糖尿病の原因は
- (1)インスリンが効かない
- (2)インスリンが足りない
糖尿病になったら起こること
- (1)糖の急激な上昇により、血管の内側から活性酸素が大量に発生
- (2)糖が血液で渋滞し、活性酸素が血管を破壊する
- (3)酸素と栄養が運ばれなくなり、合併症が発生
活性酸素とは?
体の細胞をサビさせてしまう毒性の強い物質です。人間が吸い込む酸素が、飲酒や喫煙、紫外線やストレスによって増加し、心筋梗塞、脳卒中、動脈硬化や高血圧など万病の原因となります。
こわいのは『活性酸素』が引き起こす合併症
糖尿病が悪化すると活性酸素が増え、体中の血管が詰まったり破れたりすることで、様々な合併症が起こってしまいます。
細い血管が詰まって起きる合併症
- (1)糖尿病腎症
-
腎臓の機能が働くなり人工透析を週に3回、各4時間行うことになります。透析は腎臓を移植しない限り一生続けなければなりません。
- (2)糖尿病網膜症
-
失明原因第3位。血糖値が高い状態が続くことにより、目の毛細血管が破れて酸素や栄養が届かなくなり発症します。進行しても自覚症状が出にくいため、ある日突然目の前が真っ暗になることが多い。
- (3)糖尿病神経障害
-
神経細胞に血液が届かなくなり、全身の神経に障害が起こる。 発汗異常や立ちくらみ、便通異常、男性の場合は勃起障害も。 ちょっとした傷や水虫により足が腐り、年間2万本もの足が切断されている。
太い血管が詰まって起きる合併症
- (1)心筋梗塞
- 糖尿病の人が心筋梗塞になるリスクは3倍高いと報告があります。まえぶれなく胸に激痛が走り、30分以上、場合によっては何時間も痛みが続き意識を失ってしまいます。
- (2)脳梗塞
- 糖尿病の人が脳梗塞になるリスクは男性で2倍、女性は4倍近くも高いと報告されています。脳梗塞は後遺症が残りやすく、言語障害、認知症、半身マヒなど、ときには寝たきりになってしまうことも多々あります。
ポイント!
- 糖尿病の原因は、インスリンが足りないこと、もしくは効かないこと。
- 活性酸素による血管破壊が原因で合併症を引き起こす。
医師・栄養士も注目!
糖尿病のリスクを減らす『ファイトケミカル』
糖尿病を予防するために何をするか。元ハーバード大学准教授 麻布医院 院長 高橋弘先生が長年研究してこられたファイトケミカルを紹介します。
ファイトケミカルとは?
ファイトケミカルとは植物が作り出す「体に重要な天然の機能性成分」の総称です。植物は動くことができないため、紫外線や外敵から身を守るためにさまざまな作用のある成分を作り出し、その数は10,000種類以上あるといわれています。
ファイトケミカルには「血糖値の上昇抑制」、「糖代謝異常の改善」だけでなく、糖尿病を悪化させる活性酸素を除去する「強力な抗酸化作用」もあります。
糖尿病に効くファイトケミカルの効果
1. インスリン抵抗性の改善作用(インスリンの効きやすさUP)
糖尿病になるとインスリンが効きにくい体(インスリン抵抗性)になり、血糖値が下がりにくくなります。その状態が続くと血管内に増えた糖質が活性酸素を増やし、血管を破壊したり合併症を引き起こしてしまいます。大豆に含まれるファイトケミカル「ダイゼイン」には、インスリンを効きやすくする作用が確認されています。
*ダイゼイン10μMでは、インスリンの効果がダイゼインを加えなかった細胞より約2倍増加し、100μMまで量が増えるにつれてインスリンの効きやすさが高まった。
2. 強力な抗酸化作用:クランベリーのプロアントシアニジン
赤ワインなどのポリフェノールもファイトケミカルの1種。そのうち特に抗酸化作用が強いのが、クランベリーなどに含まれるプロアントシアニジン。
*データ:Journal of Agricultural and Food Chemistry,2004,52:4026-4037
*データ:Journal of Nutrition,134:613-617,2004;USDA Proanthocyanidin data-base
PAC=プロアントシアニジン
3. 内臓脂肪の燃焼作用(カテキン)
内臓脂肪細胞から糖尿病や動脈硬化といった生活習慣病のリスクを増やす物質が分泌される。
12週目に呼気分析
出典元:J Health Sci, 51, 248-252, 2005
8週目に呼気分析
出典元:J Health Sci, 51, 233-236, 2005
おすすめのファイトケミカルとそれを含む食べ物
- クランベリー
- 成分
- アントシアニン、プロアントシアニジン
- 作用
- 抗酸化作用、血糖値上昇抑制、動脈硬化予防、眼の健康維持作
- 大豆
- 成分
- イソフラボン、オリゴペプチド、サポニンなど
- 作用
- 抗酸化作用、糖尿病予防の可能性、脂質代謝改善、心臓病リスク低下、骨粗しょう症予防
- 緑茶
- 成分
- カテキン・タンニン
- 作用
- 抗酸化作用、血糖低下作用、血圧低下作用、肥満予防
- とうもろこし
- 成分
- β-クリプトキサンチン
- 作用
- 糖代謝異常の改善、脂質代謝異常の改善